壺中居-KOCHUKYO

留守玲展 Creative Reconsideration of Welding Method

留守玲展 RUSU AKI IRON WORKS Creative Reconsideration of Welding Method

会期10月25日(月)〜31日(日) 11:00〜17:00 ※会期中無休

会場壺中居3階ホール

今展について 留守 玲

個展タイトル「Creative Reconsideration of Welding Method」(熔接についての創造的再考 )は、展覧会内で発表する自主制作の本のタイトルでもあります。

私はこれまで、工業分野で発展してきた熔接・熔断を自分なりに熔融行為として解釈し、作品へと昇華させてきました。それは、この技術の中に主目的である接合切断以外の要素を発見する期間でもありました。発見が重なるにつれ、私は段々と、これらを美術的技法として整頓する必要性を感じました。そして、様々な現象を単体に分けて取り出し、技法として名称を与えつつ、これまでの作品を包括的に捉える試みを行ったのが、「Creative Reconsideration of Welding Method」です。自身の熔接観の考察を具現化したこの取り組みは、私にとって「捉え方の創作」という、造形活動の一環になり得るのではないかと考えています。

熔融現象が起こす表情を一つ一つ言語化して、技法として認識してみると、その熔け姿の理由が少し明瞭になりました。其々の行為に枠組みの様なものが生まれ、結果、枠の外への意識も向くようになり、先に進みやすくなりました。この僅かな進歩が、制作渦中での些細な選択に影響を与えています。

若い頃に漠然と見ていた、憧れの文士達が集う写真のその場所が「壺中居」であることをきちんと認識したのは、自分が工芸の世界と実際に関わるようになってからです。 本の創作は夢の一つでしたが、「本」という存在そのものへの憧憬の大きさが自身を萎縮させ、時間ばかりが過ぎていました。今回、未熟ながらも踏み出してみようと思い切る事が出来たのは、壺中居という場所性に背中を押されたからです。

留守玲 制作風景

留守 玲 略歴

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1976 宮城県生まれ
2001熊日総合美術展21世紀アート大賞2001 熊本放送賞
2002多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻クラフトデザイン修了
2003財団法人日本文化藝術財団 第11回 日本現代藝術奨励賞
2004拡兆する美術TSUKUBA2004(茨城県つくば美術館)
2007〈素材×技術〉からフォルムへー布と金属—(茨城県つくば美術館)
2008第44回神奈川県美術展工芸部門特選
開館30周年記念展Ⅱ 工芸の力—21世紀の展望(東京国立近代美術館工芸館)
2012「留守玲の茶室 さびのけしき」(山口県立萩美術館・浦上記念館)
方法の発露(ギャラリー緑隣館・埼玉)
2014第19回 MOA岡田茂吉賞展(MOA美術館・静岡)(’19 第21回)
2015Nippon! Contemporary Arts and Crafts from Japan, ESH Gallery, Milan, Italy
2016生への言祝ぎ 展(大分県立美術館)
第2回菊池寛実賞
第27回タカシマヤ美術賞 
2017第34回 公益財団法人美術工芸振興佐藤基金 淡水翁賞 最優秀賞
2018風詠抄ー常(横浜髙島屋7階美術画廊・神奈川)
第34回 淡水翁賞 受賞者展(壺中居・東京)
「特別陳列 留守玲」所蔵作品展「こどもとおとなのアツアツこうげいかん」会場(東京国立近代美術館工芸館)
東京国立近代美術館工芸館名品展 いろどりとすがた(石川県立美術館)
2019 アートみやぎ2019(宮城県美術館)
生まれ変わる伝統:イセ・コレクション所蔵・現代日本の工芸品展(香港大学美術博物館・香港)
所蔵作品展「みた?ーこどもからの挑戦状」(東京国立近代美術館工芸館)
これまでとこれからの架け橋(横浜髙島屋7階美術画廊)
野口裕史退職記念展 多摩美術大学金属工芸40年(多摩美術大学美術館・東京) 
所蔵作品展 パッション2020 今みておきたい工芸の想い(東京国立近代美術館工芸館)
2020輝けるメタルアート 淡水翁賞35回記念(石洞美術館・東京)
平面と立体ー共鳴するノスタルジア(髙島屋美術画廊・東京、京都、大阪、名古屋巡回)
国際工芸アワードとやま 優秀賞
2015〜
現在
多摩美術大学工芸学科非常勤講師

収蔵先

山口県立萩美術館・浦上記念館/菊池寛実記念智美術館/髙島屋史料館/イセ文化基金

開催のごあいさつ

秋深まる10月、留守玲先生の個展を開催する運びとなりました。

鉄の特性と表現の可能性を極限まで追求し生み出される作品は、高い評価を受け、近年数々の賞を受賞しています。

内側から盛り上がるような量感と大胆かつ嫋やかなフォルム。
探るようで確信的な線は必要不可欠な表現を追求した結果であるように感じられます。

作品の細部を見るとその仕事は実に繊細で緻密ないくつもの技術の積み重ねであることがわかります。
金属が溶け結びつき、重ねられることで現れる、太古の地層の堆積や生命の果てのように思われる静謐な雰囲気。独自の表現は美しく厳しく魅力的で、鑑賞者を幽玄な世界へと誘います。

本展では最新十数点と共に、作家が自らの技法を作品写真と共に振り返り、整理した自主製作本を発表いたします。『RUSU AKI IRON WORKS 2004 - 2020(Creative Reconsideration of Welding Method)留守玲 鉄の仕事  熔接についての創造的再考』
写真の選定、文章、紙面のデザイン、素材選定など造本設計に至る全てを作家が手がけた本作は随所に遊び心が溢れ、留守ファンならずとも楽しめる内容です。一部作家のお母様が手掛けた手製本版も含まれます。
かつて小林秀雄や川端康成など多くの文士が通った壺中居を舞台に、文学にも造詣の深い作者が皆様にお届けする新たな「作品」といえる一冊です。新作のご鑑賞と共にご覧頂ければ幸いです。

主催 ギャラリーこちゅうきょ

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